六本木クラブV2にてナンパ-夏季休暇、初勝利に向けて-

8/13、romeoのお盆休みが始まった。

今年はカレンダーが悪く、romeoのお盆休みは13~16日の4日間だけ。
限られた貴重な休み一日を、六本木でのクラブナンパに費やすということは、確実な結果を出さなければならないということである。
それはromeoにとってプレッシャーであった。
しかし、それはさして難しいことではないはずだ。
遠く転勤先の、お好み焼きが主食の国での心の支えはナンパだった。
友人も、家族も、歳の近い同僚もいない。
そんなromeoの寂しさを埋めてくれたのは、ナンパを通じて出会ってきた女性たちだった。
それだけ真剣にナンパというゲームと向き合ってきた自負がある。
自分という存在を証明する、固い決意を持ってromeoは家を出た。
 
 
 
22:00ロアビル前、GWを共に戦ったウイング、アヤセと合流する。
もともと端正な顔立ちなのだが、いつにもましてアルファメイルのオーラを感じる。
お互い、内から溢れ出るギラつきを抑えきれないでいた。
時間も早かったのでHUBに入り近況トーク。
GWの失敗、それ以降のアヤセの市場調査をもとに大枠の戦略を共有する。
ナンパという行為について、真剣に議論を交わすのは楽しかった。
romeoもアヤセも孤独だったのだ。
 
「六本木の夜を楽しもう!」
 
六本木の、日本一のナンパ箱と言われるV2で、コンビでナンパをする。
楽しい夜にならないはずがなかった。
さながら出走前の競走馬のように、落ち着くなくHUB店内を目でサージングしていた。
二人とも、もう一秒も我慢ならなかった。
 
「飲み終わったら早いけど入ろう」
 
 
 
23:00、V2入場。
安定のガラガラ状態。
romeoもアヤセもクラブミュージック自体好きなので、無人のクラブでもそれなりに楽しめる。
途中、関西人の観光客(男×2)とクラブ情報を教えたりしながら人が増えるのをじっと待つ。
 
23:30を回ったぐらいから徐々にターゲットが入ってきた。
アヤセを顔を合わせる。
バーカウンターから流れてくる女性二人組を見る。
言葉はいらなかった。
 
さあ、ゲームの始まりだ。
 
 
 
「こんばんは、そんなにスイーツ持って食いしん坊さんだね」
「女の子はスイーツ食べ放題なの!」
 
オープンした。
romeoの担当は20代後半の金融系OL。
お決まりルーティンを繰り出し続ける。
若い時はそうとう派手に遊んでいたが、最近はすっかり落ち着いているとのこと。
(落ち着いてる女が六本木のクラブには来ないんじゃないか?)
今は3年付き合っている彼氏がいて、結婚も考えているようだ。
ただクラブ遊び、パーティー遊び等、次元の違うパーリーピーポーだった。
盛り上がってはいるが、刺さっているかは未知数。
フロアに踊りにいくとのことで、その場で放流。
 
そこから通路を徘徊しながら手当たり次第に声をかけていく。
オープンするもなかなか深い和みに至らない。
お盆休み期間とはいえ平日の木曜日。
過去のGW期間に比べるとターゲットが乏しい。
 
時刻は26:00前後だっただろうか。
エントランスとフロアを繋ぐ通路で女性二人組をオープンさせる。
romeoの担当は27才事務職。
恋愛遍歴はかなり真面目。(真実かは不明)
時間的にも決断のタイミングだった。
アヤセの担当子は完全にタイプ落ちの様子。釣れ出し打診が受理された。
ただ、romeoは違和感を感じていた。違和感の正体にも気づいていた。
 
 
 
romeo担当子からは、まったくIOIが確認されていなかった。
 
 
 
ロアビルを後にして六本木交差点まで歩く。
近くの沖縄居酒屋に入る。
4人で和むがセクの雰囲気が消えていく。
軌道修正を試みるが、romeo担当子が雰囲気を強引に引き戻す。
しばらくすると、romeo担当子は「眠い」と言い放ち居酒屋で横になりだす始末。
考える、即、欲を言えば乱までの手段。
考えられるのはなんだ?友達グダか?
わからない。
ただ、現状で決定権を持つromeo担当子は障害になっている。
それを排除すれば3Pは手堅い。
最悪、アヤセが1即後、LHで合流からの乱も不可能ではない。
 
アヤセに担当子を釣れ出しするようLINEを送る。
 
romeo「なんか俺も眠いかも、せっかくだし2人で場所変えて飲んでおいでよ。〇〇ちゃん起きるまで俺が見てるから」
 
アヤセとアヤセ担当子が店を出る。
セパレート成功。あとはタイミングを見て俺もギラつく。
グダられたらLHで合流して3Pだ!
そう思っていたその時、なんとromeo担当子が飛び起きた。
 
「〇〇ちゃんはどこ?!」
「2人で仲良く出てったよ。邪魔しちゃ悪いし、俺らで飲んでよう。」
 
速攻でアヤセ担当子に電話を飛ばすromeo担当子。
まだ店内でトイレに寄っていたところに、強引に合流される。
なんとかしてこの障害を排除しなければ即はない。
やるべきことはわかっていた。
romeoは全力で担当子を足止めする。
アヤセは光の速さでLHに連れ込み即をする。
六本木交差点の信号待ちの間にromeo、ギラを仕掛ける。
セパレート成功。
(急げアヤセ!長くはもたない!)
romeo担当子、全体的に警戒心が強い。
 
「〇〇ちゃんはどこ行くの?!」
 
「いい雰囲気だし、2人にしてあげようよ」
「俺も〇〇ともっと一緒にいたいと思ってる」
「人の心配ばかりで、目の前にいる俺のことは見てくれないの?」
「まずは俺の話を聞いてよ」
(時間を稼ぐんだ…っ!アヤセならやってくれる!)
 
またしてもromeo担当子、アヤセ担当子に電話を飛ばす。
アヤセ、LHまでわずか数十メートル、ここで合流を許してしまう。
 
「ちょっと作戦会議してもいい?」
 
と距離を置かれる。
答えはわかっていた。
ただ、認めたくなかった。
 
「今日は2人で女子会するね♪」
 
 
 
六本木交差点に取り残される男二人。
romeoは自己嫌悪に陥っていた。
もし、romeoが担当子をしっかり食いつかせていれば、
もし、romeoが担当子をしっかりセパレートしておけば、
状況は違ったのは間違いない。
 
「アヤセ、すまない。俺のミスだ。」
 
「あの物件はどうしようもない。誰のミスでもない。」
「まだ箱にいる案件に釣れ出し打診しよう。恒例のロスタイムだ」
 
romeoは本気でアヤセに即られてもいいと思った。
ロアビル前~六本木交差点でストを打ちながら釣れ出し打診の反応を待つ。
クラブ最初に和んだ二人組の片方から応答があった。
5:00、V2閉店と同時に朝の六本木に解き放たれるパーリーピーポー。
お目当ての二人組が出てくるのを待つ。
5:15、まだ出てこない。
5:20、さすがにそろそろ出てくるはずだ。
5:25、romeoもアヤセもわかっていた。だが認めたくなかった。
 
もう二人とも言葉を発さなかった。
 
「飯でも食おうか」
 
つるとんたんで朝食を取る。
どちらもナンパの終わりを口にしない。
だが、わかっていた。認めたくなかっただけだ。
食事を終え、大江戸線六本木駅に向かう。
 
「じゃあ、今度はシルバーウィークに」
「ああ」
 
俺達のV2での戦いは、3連敗という結果で幕を閉じた。